武蔵村山という所は、市の中心地にも電車が来ていない。多摩都市モノレールが、立川から伸びてきているが途中で止まっていて、ここまで来るには、まだ十数年かかるんだろう。東京の中の孤島、ムサ村。オレが開拓している土地は、昔は家があって、登記簿にも宅地として登録されている場所なのだが、時が過ぎ、とんでもねぇ竹藪に変わってしまった。周りは畑に囲まれ、隣の農地を四駆で通らせてもらわなければ、歩いて入るしか方法が無い。まさに孤島。だから、ここは「孤島の中の孤島」(むさむらの人、おこらないで)。
どこでも同じと思うが、人々の交流が少ない地域では、考え方が保守的な人が多い。おれは、そんなところで、竹を伐り始めた。
いつも通り伐採の日々が続いていたが、オレの中では重大な問題が発生していた。それは、こともあろうに、一か月後に銀座で個展を開く事になっていたのだ。時間は無い、材料を買う金も、作品を作る場所も無い・・。知恵をしぼったあげく、数日前、卒業したばかりの大学の工房で、学生のふりをして制作をしていたら、当時の助手SB(死ね)にとても叱られてしまい、追い出された。 追いつめられたオレに、唯一残されたもの、それはやっぱり、竹。そしてこのありあまった体力。おれは、竹の根っこを作品にすることを思い立ち、竹伐りを竹の根掘りに変える事にした。これは、大自然とのタイマン勝負だ!気合いが入る。
ある日の午後の事だった。「すいませーん。」無心に竹を掘り続けるオレに、話しかけて来る人がいる。「近所の方から、竹藪にオウム真理教の人が来てると通報がありまして」と、警察官数人が近付いて来る。ピンチ。20分ほど職務質問をされてしまった。いろいろ聞かれたが、竹を掘っている理由について答えるのは難しかった。高校で非常勤講師をしてる事、水道屋の親方の土地だとか答えた後、彼等は帰って行った。おれが、オウムなわけ無えだろうと怒る。時間が経つにつれ、だんだん恐くなってきた。
オレをずっと見張ってるやつがいる、このまわりに・・・。よそから来た、見ず知らずの男が、竹を伐るのはまだしも、竹を掘り始めたのは、ヤツらにとっては、想像を超える行動だったようだ。
おれは見張られてる。 つづく
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